【処方箋 No.008】「役に立たない」からこそ、あなたは自由でいられる
社会に「使い勝手のいい道具」として消費されない、賢い生き方。
担当医:Dr. 荘子(そうし)
古代中国の哲学者。万物は等しいという「斉物論」や、何にも縛られない「逍遥遊」を説いた、自由を愛する隠遁の賢者。
【患者の訴え】
先生、会社から管理職への昇進を打診されているのですが、正直、一ミリも嬉しくないんです。責任だけ重くなって、上と下の板挟みになり、自分の実務やプライベートの時間が奪われる未来しか見えません。でも、周りは「出世して一人前だ」とか「もったいない」と言ってきます。出世を望まない自分は、向上心のない、ダメな人間なのでしょうか。
【診断】
あなたの苦しみは、哲学的には「無用の用」という知恵と、世間の「有用性のプレッシャー」がぶつかっている状態です。 世の中は、人間を「どれだけ役に立つか」という尺度で測ろうとします。特に会社組織では、使い勝手の良い「材木」であることを求められます。 あなたが不安を感じるのは、自分が「便利な道具」として加工され、使い古されていくことへの本能的な拒否反応です。それはダメなことではなく、自分という命を大切にしようとする、極めて真っ当な感覚なのです。
【処方箋】
荘子は、あなたに「無用の用(むようのよう)」という言葉を贈ります。
理論の解説: これを「森の大きな木」に例えてみましょう。 森の中に、真っ直ぐで立派な木があるとします。その木は「役に立つ」と思われ、すぐに木こりに切り倒されて、家の柱や家具の材料にされてしまいます。 一方で、幹がグニャグニャに曲がっていて、枝もデコボコで、大工さんが「これは使い物にならない」と見捨てた木はどうなるでしょうか。誰にも切られることなく、何百年も生き続け、大きな木陰を作り、鳥たちの憩いの場になります。 「役に立たない(出世しない)」からこそ、誰にも切り倒されず、天寿を全うできる。これこそが、実は一番「役に立つ(幸せな)」生き方なのだと、荘子は教えてくれます。
アクションプラン:
「曲がった木」を演じる 会社の中で、管理職としては「不向き」だと思われるような隙をあえて見せましょう。実務では有能でも、組織管理には興味がないという姿勢を貫くことは、自分を守る盾になります。
自分の「中庭」を耕す 会社という森での評価ではなく、自分が一番リラックスできる時間や場所(趣味や家族、自分だけの思考の時間)を人生の中心に据えましょう。
世間の「物差し」を捨てる 「課長」「部長」というラベルは、他人から見たあなたの形にすぎません。あなた自身の価値は、役職という名前がつかない「自由な魂」にあることを忘れないでください。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、昇進を断ることへの罪悪感が消え、自分の時間を守ることに誇りを持てるようになります。
ただし、あまりに「無能」を装いすぎて、今の仕事まで失ってしまうと生活が困窮する副作用があります。あくまで「実務はこなすが、管理はしない」という絶妙なバランスを保つのがコツです。
立派な柱になるよりも、風に吹かれて揺れる葉っぱでいる方が、ずっと長生きできるものです。
お大事に。
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