【処方箋 No.012】理不尽な上司を「ただの風景」に変える心の防壁
最高の復讐とは、その相手と同じような人間にならないことだ。
【患者の訴え】
先生、もう限界です。うちの上司、言うことがコロコロ変わる上に、自分のミスは棚に上げて私ばかり詰めてくるんです。「お前はやる気がない」「使えない」と、人格否定のような言葉まで浴びせられて……。 その場では言い返せず、悔しくてトイレで泣きました。家に帰っても上司の顔と言葉が頭から離れず、怒りで眠れません。この理不尽な仕打ちを、どう処理すればいいんでしょうか。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「内なる城塞(インナー・シタデル)の陥落」と診断されます。 ストア派の哲学では、世界を「自分の権限内にあるもの(自分の思考・判断)」と「権限外にあるもの(他人の言動・評判)」にはっきり区別します。 上司が何を言うかは、あなたにはコントロールできない「権限外」のことです。しかし、その言葉に傷つき、怒りを感じているのは、あなた自身の「判断」です。 あなたは今、上司という侵入者を、あなたにとって最も神聖な場所である「心の中」に招き入れ、暴れさせてしまっています。鍵をかけ忘れた家の中で、泥棒が暴れている状態と言えるでしょう。
【処方箋】
マルクス・アウレリウス先生は、あなたに「他者の悪意は、あなたの魂を汚せない」という鉄壁の思考法を贈ります。
理論の解説: これを「透明なガラスの壁」に例えてみましょう。 上司の罵倒は、汚い泥水のようなものです。普通にしていれば泥水を浴びて汚れてしまいますが、あなたの心に「理性」という透明なガラスの壁があればどうでしょう? 泥水は壁に当たって流れ落ちるだけで、壁の内側にいる「本当のあなた(魂)」には一滴も触れることができません。 「彼が私を侮辱した」と思うから腹が立つのです。「彼が何か叫んでいる(現象)」とだけ捉えれば、それは犬が吠えているのと同じ自然現象にすぎません。あなたの価値は、他人の言葉によって1ミリも傷つかないのです。
アクションプラン:
朝、「予言」をする マルクス・アウレリウスは毎朝こう唱えました。「今日私は、傲慢な奴、感謝知らずな奴、不誠実な奴に出会うだろう」。 出社前に「今日上司は必ず理不尽なことを言う」とあらかじめ予言しておきます。実際に言われたら、「ほら、予言通りだ。私の予想は正しかった」と心の中でガッツポーズをしましょう。これだけでダメージは激減します。
上司を「可哀想な患者」と見る 理不尽な人は、生まれつきの悪人というより、善悪の判断がつかない「無知という病」にかかっているのです。「この人は精神的に余裕がないのだな」「幼稚なのだな」と、医師が患者を見るような目で冷静に観察・分析してください。
「同じレベルに落ちない」ことを勝利とする 「最高の復讐は、相手と同じようにならないことだ」と先生は言います。怒鳴り返したり、心の中で呪ったりすれば、あなたも上司と同じ「感情に支配された獣」に落ちてしまいます。冷静に無視し、自分の気高さを保つことこそが、あなたにとっての完全勝利です。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、上司の叱責が「自分への攻撃」ではなく、単なる「外部の騒音」として処理できるようになり、夜もぐっすり眠れるようになります。
ただし、あまりに無表情で「観察」しすぎると、「話を聞いているのか!」と火に油を注ぐ副作用があります。表面上は神妙な顔つきで相槌を打ちつつ、心の中では鉄壁のシェルターでくつろぐ、という「面従腹背」のスキルを併用してください。
あなたの心の平和を守る鍵は、上司ではなく、あなたが握っています。
お大事に。
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