虚無感・孤独

【処方箋 No.032】「役に立つこと」ばかりの毎日に、「遊び」という深呼吸を

処方医: Dr. フリードリヒ・シラー
2026年2月1日
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人は、遊んでいる時だけが、完全な人間なのです。

【患者の訴え】

先生、毎日がモノクロ映画みたいなんです。仕事をして、帰って、スマホを見て、寝る。その繰り返しで、週末になってもやりたいことが一つも浮かびません。 周りはキャンプだ、サウナだ、推し活だと楽しそうですが、私は何をやってみても「で、これが何になるの?」と冷めた目で見てしまい、すぐに飽きてしまいます。何かに夢中になれる人が羨ましい。このまま情熱を持てないまま、ただ時間を消化するだけの人生で終わるのが怖いんです。

【診断】

あなたの症状は、哲学的には「遊戯衝動(ゆうぎしょうどう)」の欠乏による「人間性の分断」です。 シラー博士は、人間には二つの衝動があると言いました。一つは「感性衝動(食べたい、眠たいなどの肉体的欲求)」、もう一つは「形式衝動(正しくありたい、合理的でありたいという理性的欲求)」です。 今のあなたは、平日は仕事で「形式(理性)」に縛られ、休日はただ体を休める「感性(肉体)」に支配されています。この二つの間を行き来しているだけなので、心が満たされないのです。 あなたが「これが何になるの?」と考えてしまうのは、理性が強すぎて、「役に立つこと(形式)」以外を無意識に排除してしまっているからです。心の酸素不足の状態ですね。

【処方箋】

シラー博士は、あなたに「人間は遊んでいる時だけが、真に人間である」という名言を処方します。

理論の解説: これを「機械の歯車」に例えてみましょう。 仕事をしている時、あなたは社会という巨大な機械の「優秀な歯車(パーツ)」です。合理的で役に立ちますが、全体の一部にすぎません。 しかし、「遊び」に没頭している時、例えば積み木を高く積むことに真剣になっている子供を想像してください。彼は誰のためでもなく、何かの利益のためでもなく、ただ自分の喜びのために全体重をかけています。 この時、彼は歯車ではなく、一つの独立した「完全な人間」です。 趣味がないのは、あなたが「何かを得よう(コスパ)」としすぎているからです。趣味の目的は、成果物を出すことではなく、あなたを歯車から人間に戻すこと(回復)にあるのです。

アクションプラン:

「無駄なこと」を真剣にやる 「役に立たないこと」をあえて選んでください。近所の野良猫の名前を勝手に考える、雲の形を観察して日記につける、100円ショップの粘土で謎のオブジェを作る。ポイントは「誰にも見せない」「一円にもならない」ことです。その「無駄」こそが、理性の支配を解く鍵です。

5歳児の自分にインタビューする 理屈で考える前のあなたが何に熱中していたか思い出してください。ダンゴムシ集め? チラシの裏への落書き? 泥団子作り? その要素(集める、描く、作る)の中に、あなたの魂が喜ぶ「遊びの原石」が埋まっています。

「三日坊主」を推奨する 「熱中しなきゃ」と意気込むと、それがまた「義務(仕事)」になります。「つまらなかったら3分でやめていい」というルールで、手当たり次第に手を出してください。遊びに責任感は不要です。

【用法・用量】

この考え方を取り入れると、「意味のあることをしなきゃ」という呪縛から解き放たれ、子供のような好奇心が少しずつ戻ってきます。

ただし、遊びすぎて仕事に支障が出たり、ギャンブルのような「身を滅ぼす遊び」に走ったりするのは副作用が強すぎます。あくまで「心を豊かにする創造的な遊び」を選んでください。

役に立たない時間こそが、あなたの人生を豊かに彩るのです。安心して、無駄なことをしてください。

お大事に。