【処方箋 No.037】「孤独な群衆」の中で、自分だけの羅針盤を持つ方法
みんなと同じ方向を向くのをやめれば、孤独は「自由」に変わります。
【患者の訴え】
先生、渋谷のスクランブル交差点や満員電車の中にいる時、ふと強烈な恐怖に襲われるんです。「こんなに人がいるのに、誰も私のことを知らないし、私も誰のことも知らない」って。 周りの人はみんなスマホを見て誰かと繋がっているのに、私だけが透明人間になって、コンクリートの無人島にポツンと立っているみたい。賑やかな場所にいればいるほど、逆に自分が世界から切り離されているような、寒々しい疎外感を感じるんです。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「他人指向型(アザー・ディレクテッド)」の過剰作動によるレーダー疲労です。 リーズマン博士は、現代人の性格を「他人指向型」と定義しました。これは、自分の内部にある信念よりも、「他人がどうしているか」「世間はどう動いているか」という外部の信号に敏感に反応して生きるタイプです。 今のあなたは、頭の中に高性能な「レーダー」を積んで、常に周囲をスキャンし続けています。しかし、そのレーダーは「同調するため(変な人と思われないため)」に使われており、「心を通わせるため」には使われていません。 周りの人も全員、お互いを監視し合うレーダーごっこをしています。だから、物理的には密集していても、精神的には誰も触れ合わない「孤独な群衆」が出来上がるのです。
【処方箋】
リーズマン博士は、あなたに「ジャイロスコープ(羅針盤)」への積み替えを処方します。
理論の解説: これを「船の航海」に例えてみましょう。 今のあなたは「レーダー」だけを頼りに航海しています。「あっちの船が右に行ったから右」「こっちの船が止まったから止まる」。これでは、周りに船がいないと不安でたまらないし、自分の目的地も分かりません。 しかし、かつての人々(内部指向型)は「ジャイロスコープ(羅針盤)」を持っていました。これは、船がどう揺れようと、周りに誰がいなかろうと、常に「私は北へ行く」という自分だけの方向を示し続ける装置です。 孤独を感じるのは、あなたが周りの船ばかり見ているからです。自分の羅針盤さえあれば、周りがどうであれ、「私は私の航路を行く」という充実感で満たされます。
アクションプラン:
「レーダー」の電源を意図的に切る 電車の中でスマホ(外部へのレーダー)を見るのをやめ、文庫本を読むか、目を閉じて音楽を聴いてください。外部の情報を遮断し、自分の内側の感覚に集中する時間を強制的に作ります。
「流行っていない」好きなものを愛でる 「みんなが見ているから」という理由でNetflixを見るのではなく、「誰も知らないけど、私はこれが好きだ」というニッチな趣味を一つ持ってください。それがあなたのジャイロスコープの核になります。
孤独を「独立」と言い換える 群衆の中で孤独を感じたら、「私は今、寂しい」ではなく、「私は今、誰にも影響されず独立している」と言い換えてください。無人島は、漂流して着く場所ではなく、自分だけの城を建てるための場所なのです。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、人ごみの中でも「自分」という軸がブレなくなり、他人の視線や動向が気にならなくなります。
ただし、あまりにジャイロスコープ(自分軸)を強化しすぎて、人の話を全く聞かない頑固者になると、社会生活で座礁する副作用があります。レーダーは「衝突防止」のために補助的に使いましょう。
あなたの心の針が指す方向へ進んでください。そこには、あなたと同じ方角を目指す誰かが必ず待っています。
お大事に。