【処方箋 No.054】「時間が足りない」のではない。「時間を浪費している」のだ
人生は、無駄遣いしなければ、十分に長いものです。
【患者の訴え】
先生、怖いです。一年があっという間に過ぎていきます。「ジャネーの法則」ってありますよね? 年を取るほど時間が早く感じるという。 最近、その加速が凄まじくて。「あれ、もう12月?」「この前正月だったのに」と驚いてばかりです。 やりたいことは山ほどあるのに、日々の雑用に追われているうちに、何も成し遂げられないままお爺ちゃん(お婆ちゃん)になって死んでいくんじゃないか……。そんな焦りで、カレンダーを見るのが辛いんです。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「多忙(オッキューパティオ)」による人生の消失です。 私はかつてこう言いました。「我々は短い時間を持っているのではなく、実は多くの時間を浪費しているのだ」と。 あなたが「時間が早い」と感じるのは、物理的な時間の問題ではありません。あなたが自分の時間を、他人への義理や、未来への心配、無意味な娯楽のために「タダ同然」で配り歩いているからです。 自分の時間を自分のために使っていない時、記憶に残る「生きた実感」が生まれません。だから振り返った時に中身がスカスカで、「あっという間だった(何もなかった)」と感じてしまうのです。
【処方箋】
私は、あなたに「時間の守銭奴になれ」と処方しよう。
理論の解説: これを「財産」に例えてみよう。 君は、100円を盗まれたら怒るし、財産を守るためには鍵をかけるだろう? 人はお金に関してはケチだ。 しかし、最も価値がある「時間」に関してはどうだ? 嫌な飲み会、ダラダラ見る動画、悩んでも仕方ないことへの心配……。君は自分の寿命を、通りすがりの人に「どうぞ使ってください」と投げ与えている。 ジャネーの法則を止める方法は一つ。「今日という一日を、一生涯のように扱うこと」だ。 流れていく時間をザルのように通すのではなく、一瞬一瞬を「私のものだ」と強く握りしめる。そうすれば、時間は濃密になり、スピードは緩やかになる。
アクションプラン:
「生きる準備」をやめて「今すぐ生きる」 「仕事が落ち着いたら」「定年したら」と、楽しみを先送りにしていないか? それは「生きる準備」であって、生きることではない。未来に期待するのはやめなさい。未来は不確実だ。今すぐ、今日、やりたいことをやりなさい。
無駄な時間を「監査」する 家計簿をつけるように、時間の使い道を監査してみよう。「他人の機嫌を取る時間」「スマホを眺める時間」。それらを削除して、自分自身と向き合う時間を取り戻しなさい。自分のために使った時間だけが、君の人生としてカウントされる。
過去の偉人と過ごす 同僚と愚痴を言い合う1時間は一瞬で消えるが、本を読んで私(セネカ)やソクラテスと対話する1時間は、君の人生に永遠の知恵を加える。良質な読書は、他人の時間を自分の人生に継ぎ足すことができる、唯一の寿命延長術だ。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、何気ない一日が「宝石」のように貴重に感じられ、焦りではなく充実感を持って夜を迎えられるようになる。
ただし、時間を惜しむあまり「急げ! 早くしろ!」と他人を急かすと、嫌われる老人になる副作用がある。自分には厳しく、他人にはゆったりと接するのが賢者の時間の使い方だ。
髪が白いからといって、長く生きたとは限らない。ただ「長く存在していただけ」かもしれない。君は、長く生きなさい。
お大事に。
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