【処方箋 No.051】「あの頃」はもうない。激流のような「今」を乗りこなせ
同じ川に二度入ることはできません。昨日のあなたと今日のあなたは別人です。
【患者の訴え】
先生、お酒が入ると、つい同じ話ばかりしてしまいます。「俺の若い頃はすごかった」「あのプロジェクトを成功させた時は寝ずに働いた」……。 今の自分は第一線を退き、誰からも注目されない存在です。だからこそ、一番輝いていた頃の記憶にしがみついて、自分の価値を証明しようとしてしまうんです。 でも、若者たちが退屈そうに相槌を打っているのを見ると、「ああ、自分は過去に生きる老害になったんだな」と惨めになります。どうすれば「今」を生きられるのでしょうか。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「流転(るてん)への抵抗」による精神の停滞です。 私は「万物は流転する(パンタ・レイ)」と言いました。この世界で変わらないものは一つもありません。 あなたは世界を「固定されたアルバム」のようなものだと思い込み、一番気に入っているページを開いたまま、そこで時間を止めようとしています。 しかし、世界はアルバムではなく「燃え盛る炎」です。一瞬たりとも同じ形を留めません。 あなたが苦しいのは、「もう存在しない過去」を実体だと思い込み、目の前で刻々と変化している「現在という炎」から目を背けているからなのです。
【処方箋】
私は、あなたに「川の真理」を処方しよう。
理論の解説: 有名な言葉を贈る。「人は同じ川に二度入ることはできない」。 川に入り、一度上がって、もう一度入った時、そこには新しい水が流れている。それはもう以前とは「別の川」なのだ。 人間も同じだ。過去に栄光を掴んだ「あなた」と、今ここにいる「あなた」は、細胞も経験も入れ替わった別人なのだ。 「昔は良かった」と嘆くのは、川岸に立って「さっきの水よ、戻ってこい!」と叫ぶようなものだ。それは不可能であり、滑稽でさえある。 去っていった水を追うのをやめ、今あなたの足元を冷たく、激しく流れている「新しい水(現在の状況)」の感触を味わいなさい。変化は「喪失」ではなく、常に新しい何かが生まれる「生成」なのだから。
アクションプラン:
「前世の話」として封印する 過去の武勇伝を語りたくなったら、「これは今の私の話ではない。前世の記憶だ」と心の中で唱えて飲み込んでください。今のあなたが語るべきは、今のあなたの挑戦や、今感じていることです。
若者に「教える」のではなく「教わる」 過去の住人は教えたがりますが、現在の住人は学びたがります。「昔はこうだった」と言う代わりに、「今はどうなってるの?」「最近の流行りは何?」と若者に聞いてください。それだけで、あなたは過去の遺物から、現在の探検家へと若返ります。
変化を「ダンス」のように楽しむ 体力の低下や立場の変化を「劣化」と捉えず、「お、次はこう来たか」と面白がってください。世界が変わるなら、自分も変わればいい。その変化に合わせてステップを踏むことは、過去に安住するよりずっとスリリングで楽しい遊びです。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、過去の重荷が消え、毎日が「二度とない新しい一日」として新鮮に感じられるようになります。
ただし、過去を全否定して「記憶喪失」のようになる必要はありません。過去は「懐かしむ場所」ではなく、今のあなたを形作った「土台」として、静かに感謝するだけで十分です。
世界は燃えています。灰になった過去をかき集めるより、今燃えている炎で暖を取りなさい。
お大事に。
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