【処方箋 No.050】「ポンコツ化」は劣化ではなく、人生という果実が「熟した」証拠
若者は「力」で勝負し、老人は「舵」で勝負する。
【患者の訴え】
先生、自分が自分でなくなっていくようで怖いんです。 人の名前がパッと出てこない、「あれ、それ」ばかり増える。駅の階段を登るだけで息が切れる。昔なら一晩でできた仕事に何日もかかる……。 まるで自分という機械のネジがポロポロと外れて、ポンコツになっていく感覚です。「ああ、こうやって私はダメになっていくんだ」という情けなさと、かつての自分とのギャップに、夜一人で泣きたくなります。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「自然の四季」に対する「無理解による抵抗」です。 人生には四季があります。青春の荒々しさ、壮年の力強さ、そして老年の円熟。あなたは今、人生の「秋」や「冬」に差し掛かっているのに、まだ「夏」の基準で自分を採点しています。 「速く走れない」「重いものが持てない」と嘆くのは、冬に「なぜセミが鳴かないんだ!」と怒っているのと同じです。 あなたがポンコツになったのではありません。あなたは「肉体の力」で戦うフェーズを終え、「精神の知恵」で生きる、より高貴なステージ(円熟期)に移行したのです。
【処方箋】
キケロ先生は、あなたに「船長の舵(かじ)」という視点を処方します。
理論の解説: これを「航海」に例えてみましょう。 船の上で、若い船員たちは汗を流してロープを引いたり、マストに登ったりして走り回っています(体力・記憶力)。 一方、船長(老人)は船尾に静かに座り、ただ舵(かじ)を握っています。 走り回らない船長を見て「あいつは何もしていない、ポンコツだ」と言う人がいるでしょうか? いませんよね。船長は、若者ができない「大きな判断」をしているからです。 「大きなこと」は、体力やスピードではなく、思慮と人格と判断力によって成し遂げられます。記憶力や体力が落ちたのは、神様があなたに「もうロープは若者に任せて、君は舵を取りなさい」と言っている合図なのです。
アクションプラン:
「忘れる」を「脳の断捨離」と捉える 名前が出てこないのは、脳が劣化したからではなく、あなたの人生経験が豊かすぎて、脳内の図書館が満杯だからです。「どうでもいい情報は自動的に捨てているのだ。重要なことだけは覚えている」と開き直ってください。
「できない」を「愛される隙」に変える 全部自分でできてしまう完璧な人は、尊敬はされますが、愛されにくいものです。「ごめん、これ手伝って」と若者に頼ることは、彼らに活躍の場を与える「プレゼント」です。ポンコツな部分は、周囲との絆を結ぶフックになります。
過去の自分と競争せず、現在の自分を耕す 「昔はできたのに」という比較は禁止です。その代わり、「今の私だからできる話」「今の私だから出せる雰囲気」を磨いてください。肉体の衰えと反比例して、精神の品格を高めていくのが、賢い老年の戦略です。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、身体的な衰えに一喜一憂しなくなり、「老いることも悪くないな」と堂々と歳を重ねられるようになります。
ただし、キケロ先生のように「老人は敬われるべきだ!」と偉そうにしすぎると、現代では「老害」と言われて若者が逃げていきます。「船長としての威厳」と「チャーミングな笑顔」をセットで装備してください。
果物は、熟した時が一番甘くて美味しいのです。あなたも今、人生で一番味わい深い時期にいるのですよ。
お大事に。
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