【処方箋 No.016】「都合のいい人」を卒業し、自分という人間に敬意を払う
自分を安売りしてはいけません。あなたは「道具」ではなく、尊厳ある「目的」なのです。
【患者の訴え】
先生、私はどうしても頼み事を断れません。「悪いな」とか「嫌われたくないな」と思って引き受けてしまい、気づけば面倒な仕事や損な役回りばかり押し付けられています。 周りの人は私を「便利で都合のいい人」だと思っている節があり、雑用ばかり増えて自分の時間がありません。断れない自分が悪いのは分かっていますが、どうすればこの「損ばかりするサイクル」から抜け出せるのでしょうか。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「自分自身を『手段』として扱っている」という道徳違反の状態です。 カント先生は、「あなたの行う行為が、自分であれ他人であれ、人間というものを単なる『手段(道具)』としてだけでなく、常に『目的』として扱うようにせよ」と命じました。 あなたは他人を助けるために、自分という人間を「道具(手段)」として使っています。他人の機嫌を取るための犠牲として自分を差し出しているのです。 厳しい言い方になりますが、カント先生はこうも言っています。「自分自身を芋虫にしてしまった者は、後で踏みつけられても文句を言うことはできない」と。あなたが損をしているのは、あなたが自ら「踏みつけられてもいい芋虫」のように振る舞ってしまっているからなのです。
【処方箋】
カント先生は、あなたに「自分自身への義務」という考え方を処方します。
理論の解説: これを「王宮の執事」に例えてみましょう。 執事は王様(他人)に仕えるのが仕事ですが、執事自身もまた、一人の人間としての尊厳を持っています。もし王様が「泥の中を這いつくばれ」と命じても、執事は「人間としての誇り」にかけて断らなければなりません。 あなたは今、自分という執事に「何でも言うことを聞け」と命じています。しかし、あなたの中には「理性の声」という裁判官がいて、「自分をそんなに粗末に扱ってはいけない!」と警告しているはずです。断ることは冷たさではなく、あなた自身に対する「正義」なのです。
アクションプラン:
「自分への敬意」を最優先する 頼まれごとをされた時、「これを引き受けることは、私自身の尊厳を傷つけないか?」と問いかけてください。自分を安売りすることは、謙虚さではなく、自分という人間への侮辱です。
「普遍化」して考える カント先生の教えに従い、こう考えてみましょう。「もし世界中の全員が、私のように嫌なことを断らずに引き受けていたらどうなるか?」 おそらく、図々しい人だけが得をし、優しい人が奴隷のようになる社会になるでしょう。それは理性が認める正しい世界ではありません。だから、あなたが断ることは、世界の正しさを守る行動なのです。
毅然として「NO」と言う 言い訳や嘘をつく必要はありません。「それは私の尊厳に関わるのでできません」とは言えないまでも、「私にはそれを引き受ける余裕がありません」と事実だけを伝えればいいのです。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、自分を大切に扱うことができるようになり、不思議と周囲からも「一目置かれる存在」として尊重されるようになります。
ただし、あまりに頑固になりすぎて「それは私の義務ではありません!」と全ての頼みを機械的に断ると、人間関係がギスギスする副作用があります。「喜んでできること」と「尊厳を損なうこと」の線引きを大切にしてください。
ものには「値段」がありますが、人間には「尊厳」があります。あなたには値段などつけられない価値があることを忘れないでください。
お大事に。
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