【処方箋 No.042】「もっと欲しい」という渇きを癒やす、0円の特効薬
幸せとは「何かを足す」ことではなく、「痛みを引く」ことです。
【患者の訴え】
先生、私は病気かもしれません。ずっと欲しかったブランドのバッグや最新のガジェットを買った瞬間は、天にも昇るような幸せを感じます。 でも、一週間もしないうちにその興奮は冷めて、ただの「日常」になってしまうんです。そしてすぐに「次はあれが欲しい」と別の商品を探している。 まるで穴の空いたバケツに水を注いでいるようで、いくら買っても心が満たされません。この先、破産するまで走り続けなきゃいけないんでしょうか。
【診断】
あなたの症状は、哲学的には「空虚な欲望(空っぽの欲)」による中毒症状です。 エピクロス先生は、欲望を3つに分類しました。
自然的で必要な欲望(食欲、睡眠、友情など。満たされれば満足する)
自然的だが不必要な欲望(美食、豪華な服。あってもいいが、なくても死なない)
自然的でも必要でもない欲望(名声、終わりのない富、最新の流行品)
あなたが苦しんでいるのは、3番目の「自然的でも必要でもない欲望」です。これは、喉が渇いた時に「塩水」を飲むようなものです。飲めば飲むほど喉が渇き、永遠に満足することがありません。 あなたが買い物をやめられないのは、あなたが強欲だからではなく、あなたが「偽物の快楽(刺激)」を「本物の快楽(平安)」だと勘違いしているからなのです。
【処方箋】
エピクロス先生は、あなたに「足るを知る快楽主義」を処方します。
理論の解説: これを「パーティの翌日」に例えてみましょう。 豪華なパーティ(買い物)は楽しいですが、翌日は胃もたれや疲れ(支払いへの不安、虚しさ)が残ります。これは「動的な快楽」です。刺激的ですが、持続せず、副作用があります。 エピクロスが目指したのは「静的な快楽」です。これは、「お腹が空いていない」「寒くない」「借金に追われていない」という、マイナスがない状態のことです。 地味に見えますか? でも、これこそが「神にも等しい幸福」なのです。 「新しいバッグがないと不幸だ」というのは思い込みです。「バッグがなくても、私は寒くないし、友人もいるし、今日のパンも美味い」。この「欠如のなさ」を味わうことこそが、最強の贅沢なのです。
アクションプラン:
「欲しいものリスト」を仕分けする 欲しいものがあったら、エピクロスの3分類に当てはめてください。「これは生きるために必要か?(No)」「これは自然な欲求か?それともCMに植え付けられた欲求か?」。分類するだけで、熱に浮かれた脳が冷めていきます。
「隠れて生きる」を試す エピクロスは「隠れて生きよ」と言いました。見栄や競争から離れ、親しい数人の友人と、庭でお茶を飲みながら語り合う。お金のかからない「友情」という快楽に投資してください。それは何千万円の宝石よりも長く、あなたの心を温め続けます。
「ない」ではなく「ある」を食べる 食事をする時、「もっと高い肉が食べたい」と「ないもの」を見るのではなく、「ああ、空腹が満たされていく」という「あるもの(痛みの消失)」を味わってください。マイナスがゼロになる瞬間こそが、最高の快感なのです。
【用法・用量】
この考え方を取り入れると、CMやSNSの「買え買え攻撃」に動じなくなり、少ないお金で王様のような安らぎを得られるようになります。
ただし、あまりに禁欲的になりすぎて「水とパン以外は悪だ!」と楽しみを全否定すると、現代社会では浮いてしまいます。「たまのご褒美」は人生のスパイスとして楽しみつつ、主食は「心の平安」にしてください。
最高の調味料は「空腹」であり、最高の財産は「満足すること」です。
お大事に。
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